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角川ホラー文庫:クリムゾンの迷宮/貴志祐介

クリムゾンの迷宮
(あらすじ)
藤木が目覚めると、そこは視界一面に深紅色の岩が連なり広がっている深紅の世界だった。自分は何故ここにいるのか? ここはいったい何処なのか?傍らに置かれていた携帯ゲーム機に映し出されるメッセージには、『火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された』……死を賭した戦慄のゼロサムゲームの幕が上がる。生き抜くためにどのアイテムを選ぶのか。自らの選択が明日の運命を決める。

answer.――― 80 点

ゼロサムゲーム[zero-sum]―――複数の人が相互に影響しあう状況の中で、全員の利得の総和が常にゼロになること。登場人物が己の状況を把握できないまま、武器や食料を奪い合い、何者かのゲームに付き合う展開は世間を賑わしたかの大ヒット作『バトル・ロワイアル』を想起させる。がしかし、本作は実はそれ以前に発表されたものであり、そういう意味では、90年代後半より巻き起こった一連のゼロサムゲームをテーマにした作品の先駆けとも捉えられている逸品。すでに登場人物が問題の最中に置かれるような理不尽な展開は実のところ読者が最も望む展開で、冒頭に提示される「サバイバルアイテムを求める者は東へ、護身用アイテムを求める者は西へ、食料を求める者は南へ、情報を求める者は北へ進め」なる選択肢が、混乱する登場人物と読者の親和性をスムーズに高めてくれる仕掛けだ。「情報」を選択した主人公は空腹と戦いながら荒野を進み、情報を得る度、徐々にこのゲームに己が巻き込まれた事実を理解し、『恐怖』する。中盤以降のプレイヤーたちの殺し合いは、まさに人を人と思わないゲーム感覚な殺人劇。作品を通して、著者が性悪説を主張しているようにも思える。食料を選択した連中の末路―――生ける屍、ゾンビとしたそのアイディアは膝を叩きたくなる洒落た工夫だ。読み終わってみると、適度な満足感のなかにどこかぽっかり空虚な感覚も残るが、これも心地良い。後続のゼロサムゲーム作品にある人間ドラマこそ希薄だが、その分、読みやすさがセールスポイントになるかも。暇潰しにどうぞ。

角川ホラー文庫:クリムゾンの迷宮/貴志祐介 (1999)

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 貴志祐介

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コメント

貴志祐介の作品、80点以上と高評価ですね。この作者の作品は読んだことないのですが、自分は今度アニメ化する「新世界より」が気になってまして。この作者の他の作品が良さそうだと、安心して購入できそうです。

こげぱん #- | URL | 2012/03/05 19:52 | edit

Re:こげぱん

コメント、有難うございます!

> 貴志祐介の作品、80点以上と高評価ですね。この作者の作品は読んだことないのですが、自分は今度アニメ化する「新世界より」が気になってまして。この作者の他の作品が良さそうだと、安心して購入できそうです。

実は、自分でも高過ぎるな……と思っているので、是非とも用心して下さい。『黒い家』に関しては恐怖の演出を評価しているのでまだそこそこに信を置けるのですが、本作に関しては友人が「生涯の一冊」に数えているので、そこに影響されて自分でも盛っている気がしてなりません。まあ、レヴューでも書いたのですが、ゾンビのアイディアは大いに気に入っています。あと、ゼロサムゲームのパイオニアってところも評価して良いのかな、と。とりあえず『黒い家』で小手調べしてみて下さい。直近の本屋大賞にもランクインした『悪の経典』もロワイヤル風なので派手で良いかもしれません。

Medeski #- | URL | 2012/03/06 03:44 | edit
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