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講談社BOX:DDD (1)/奈須きのこ


1.J the E.
2.Hands.(R)
3.Hands.(L)
4.formal hunt.

answer.――― 69 点

イングヴェイ・マルムスティーンというギタリストがいる。ロック界におけるギター奏法の革命児で、ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法同様、曲中で繰り出す彼の高速のスウィープピッキングは、すべてのギタリストの鼓膜に「速さこそただ唯一の正義だ!」「速けりゃいいんだよクソッタレ!」「速いだろ!最高だろ!女はコレで濡れるんだよ!」的驚天動地の衝撃をまさしく天啓として届けた。そして、ブルース?何ソレ?俺がヤリたいのは女と、ロックンロールだ!!と、間違いなくロックスターたちの音楽的センスを悪くした。しかしイングヴェイの本当に凄いところはその圧倒的なテクニックに留まらず、メロディメイカーとしても卓越した素養を兼ね備えていたことにあった。それは話題を呼んだAlcatrazzの1stからソロ名義の『Trilogy』までの初期作品群で確認出来るだろう。さて、<インプロビゼーション>という言葉がある。その意味は即興演奏、確かなセンスとテクニックが無ければ成り立たない表現方法だ。クラシックではカデンツァの指示のとき、ジャズでは常時採られるが、ロックの世界でもギターソロなどの間奏時に採用される。イングヴェイは中期以降の作品ではギターソロに関して作曲することを完全に止め、この<インプロビゼーション>にて録音している。しかし、即興とはどんな天才でも簡単に底を見せてしまうもので、正真正銘の天才イングヴェイとてその例に漏れない。神とまで崇められた彼のギターソロはもはや「手癖」の産物で、全部「同じ」に聴こえてしまうのであった。「手癖」「同じ」……長らく余談が続いたが、これらキーワードが出たところでいよいよレヴューに突入しようと思う。ライトノベル界の三大犯罪者・奈須きのこの実質、初の商業作品『DDD』。本作はまさしく著者の「手癖」で書かれた作品だ。この人物は誰なのか?どっちなのか?死んだはず?実は死んでない?……そんな懐疑を挟む一人称、いわゆる信頼できない語り手(Unreliable narrator)であることを意図的に強調する作風は、読者に不快感を与える。その原因は明らかで、それに必然性を感じないからだ。作品のためではなく、作者が書きやすいために採用されているのが分かってしまうのだ。一日で記憶がリセットされてしまう設定、頻発する怪死、何よりも「信頼できない語り手」を用いて導き出すオチ……そのどれもが噛み合っておらず、腑に落ちない。シナリオライター出身の作家特有の挿し絵に頼った書き方も頂けない。時間軸を定めず、切り貼りのように場面を挟し込んでいるのも拙い構成と言わざるを得ない。設定も展開も既視感がつきまとう。要は、非常に雑なのだこの作品。それでも、第三章における久織家の騒動は流石の及第点。筆と設定がしっかり噛み合っている。ただ、それ以外は信者ぐらいしかまともに評価出来るところがない。著者の天稟が計れるという意味では、格好の参考資料ではある。ちなみに本シリーズは全4巻とのことだが、著者自身、己のブランド価値を下げる作品と気づいたため、いつまで経っても続編が刊行されていない。

講談社BOX:DDD (1)/奈須きのこ (2007)

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 奈須きのこ 三大犯罪者

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