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第1回本屋大賞 1位:博士の愛した数式/小川洋子

博士の愛した数式
(あらすじ)
事故で記憶力を失った老数学者と、彼の世話をすることとなった母子とのふれあいを描いた物語。家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。

answer.――― 80 点

第1回の本屋大賞に輝いた本作。小川洋子というと、まさしく「職業=作家」と謳うに相応しい定期刊行を続ける作家だが、この手の作家は時事ネタを取り入れるのが常道だ。それは政治的、風俗的ネタはもちろんだが、音楽や映画などのエンターテイメントの他ジャンルからアイディアを拝借することも間々見掛ける。記憶が80分しかもたない、という記憶障害の設定が本作の肝となるわけだが、この設定には当時読んだ多くの人が、記憶が10分しかもたない男が主人公のサスペンス映画『メメント』を連想したことだろう。まあ、元ネタはアレソレだ!?と言及するつもりは毛頭ないが、各賞の選考委員も務める著者の作品のアレンジパターンを分析するのも面白いと思い、前置いた。さて、本作。その映画『メメント』で散見される悪意とは真逆の善意が満ちている。何度振り出しに戻っても注がれる、老人の子どもへ向けられる無償の愛。不用意な発言で消えてしまう記憶だとしても老人を一時でも傷つけまいと気を配る私と息子。嘘をつくことが時には優しさとなることを肯定的描かれる展開は何気に奥深い。また、作中には数学の公式が所々に出てくるのも特徴的だ……がしかし、これは賛否両論となるだろう。というのも、理系統の学卒はプライドが高いからだ。既知の情報、ないし忘れかけていた知識を教えられるように描かれると、気分を無駄に害す傾向がある。そういう意味で、数式は添え物として流せるかが重要になってくる。後半の野球観戦、誕生日会は読者の心を温めてくれるハイライト。エンディングでの子どもを「大人」と認識しない老人にはさすがに首を傾げたが、全体的に<感動モノ>としてよく仕上げられている。「職業=作家」らしい押さえるところを押さえた作品。

第1回本屋大賞 1位:博士の愛した数式/小川洋子

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 小川洋子

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きつい内容で、済みません。

新サスケ #- | URL | 2012/04/07 09:22 | edit

Re: 新サスケ

トラックバック、有難うございます!

私もトラックバックをしたいのですが、やり方が違うのかいつも出来ないんですよね。離れて見ると、私かに押し込まれるところに押し込まれた感じがしますが、私は「人間として最後まで扱いたい」ので自分の親には施設に早いうちから行ってくれと頼んであります。

Medeski #- | URL | 2012/04/07 09:42 | edit

トラックバック

トラックバック、受け取りました。成功ですね。
ありがとうございます。
これからも、宜しくお願い致します!

新サスケ #- | URL | 2012/04/07 12:55 | edit

Re: 新サスケ

おお、珍しく成功していますね!ということは、他の人は承認してくれてなかったのか!?衝撃の事実過ぎる!!

>これからも、宜しくお願い致します!

こちらこそ宜しくお願い致します!

Medeski #- | URL | 2012/04/07 17:14 | edit

確かに成長したルートを「子供」だと博士が認識するのは
まぁ、あり得ないだろうなという気はするものの、
この小説は、小川洋子作品らしい、非現実的な
「大人のファンタジー」という位置づけで、
個人的には好きな作品です。

映画化もされて商業的にも成功した作品で、
著者の作品の中では一般受けを狙った
作品だろうとも思います。

一般的に純文は売れない、といわれるなか、
小川洋子作品が売れているのは、こういう
エンタメ性の強いものも書けるからかなという気はします。

個人的には、この作家の(良い意味で)
もっと分かりにくい、倒錯的な作品も好きです。

ちゃき #mQop/nM. | URL | 2012/04/08 21:57 | edit

Re: ちゃき

コメント、有難うございます!

> この小説は、小川洋子作品らしい、非現実的な
> 「大人のファンタジー」という位置づけで、
> 個人的には好きな作品です。

なるほど、と凄い納得しました。私、この人の作品、どうもハズレから入ったようで、Wikipediaを読み直して彼女が純文学出身の作家だと初めて知りました。そして、妊娠カレンダー、メチャクチャ読んでみたくなりました。ただ、面白そうな設定は概して文学らしさが希薄なんでその部分には期待したくないのですが、何にしても面白そう。

> 映画化もされて商業的にも成功した作品で、
> 著者の作品の中では一般受けを狙った
> 作品だろうとも思います。

これ、大事ですよね。私も本当の作家だったら誰が読んでも面白い作品に仕上げるはずだと思うので、小川ちゃんに期待し始めています。

Medeski #- | URL | 2012/04/08 22:17 | edit
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サスケの本棚 | 2012/04/07 09:18
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