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第6回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:鞄屋の娘/前川麻子

鞄屋の娘
(あらすじ)
寂しさを、ずっと誤魔化して生きてきたんだと思う……いろんな女性を愛したけれど、家族を持とうとはしなかった父。孤独を奥深くに抱き、家族を持つのが怖かった娘。白い木綿のような不思議な魅力に溢れる、衝撃のデビュー作。

answer.――― 76 点

ストーリーラインは、愛人の娘として生まれた主人公がごく一般的な<家族>というものを知らぬまま成長し、子が生まれ、家族を形成せざるえないときに直面した戸惑い……云々、と。そのまま読めば「家族」をテーマにした小説なのだろうが、それを描くことには失敗している。これは著者がごく一般的な<家族>を把握出来ていないことに因る。それなら話として成立しているじゃないか?となるが、ごく一般的……なるものを描きたければ自分こそ普通で、周囲こそ疑心なく異常だと思わねばならない。置いて、そんな「家族」のテーマを除けば、なかなか魅せてくる本作。主人公が著者と同名という仕掛けがまず思い切りが良い。これによって「―――これは文学!」と読者に構えさせ、登場人物に雲霞の作品ではまとえないリアリティを与えてくれる。自伝、半自伝(的書き方)はどんなに中身が無かろうと読み手は有難く感じるもので、投稿作でそれをやってのける辺りは著者の強かさが伺える。個人的に推したいのは、時間を軽快に飛ばす文章。終盤こそ単なる散文になるものの、回想的な節回しは頁を捲る求心力となったのは間違いない。また、作中、尋常でない迫力があったのは鬱病に罹り、妄想の世界に入ってしまったユキコと主人公の電話でのやり取り。「あたしあなたのこと嫌いみたい」と先手を打って、「じゃああたしのこと好きなの」と問い質して相手にも「……嫌いだと思うけど……」と己への嫌悪を言わしめたやり取りは感銘を受けた。これを想像で書けたなら、女の本音を引き出す小説(「暴く」のではないのがポイント)を書くことをオススメする。小説のラストには、作中作でした!的仕掛けを明かすが、これは機能していない。雑感だが、著者は創作ではなく、実体験を描いてこそ映える書き手に思える。次作以降は、どんな作風なんだろうね?興味深いところ(手を出すキッカケ待ち)。

第6回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:鞄屋の娘/前川麻子

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 前川麻子 小説新潮長編小説新人賞

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