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第5回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:俺はどしゃぶり/須藤靖貴

俺はどしゃぶり
1.俺はどしゃぶり
2.俺はキャプテン
3.NG 胸を張れ

answer.――― 75 点

「稀にみる快作」「ビールで乾杯したくなる」と全選考委員が絶賛した、第5回小説新潮長篇新人賞受賞作。この第5回には同時受賞の『風流冷飯伝』があるが、謳い文句から考えても本命はこちらなのだろう。中編一作と短編二作の三章構成で、中編の表題作が受賞作。呑んだら最後、必ず大酒を食らうところから付けられたあだ名は「どしゃぶり」。メインである中編は巨漢の高校教師「どしゃぶり」がアメリカンフットボール同好会を立ち上げ、肥満児から秀才まで生徒たち11人との約一年の奮闘を描いた物語。出版年は逆転してしまうが、本作は<素人たちによる一年間の挑戦>という意味で『風が強く吹いている』と非常に似た構造を持つ。相違点はその<勝敗>。本作では結局、試合には一回も勝てずに物語が閉じる。二戦二敗、それも二試合とも事実上の完敗の内容。その点がスポーツを題材にした作品には珍しいシビアさ、本作が実のところ、試合に力点を置いていない証明と云える。盛り上がり所は94-0の大敗を喫した後日、部員(とどしゃぶり)が起こす退学停学騒動。リアリティを追求しているだけあって、対応も至極「熱い」。校長が想像以上に格好良くて冒頭からの変貌振りに思わず笑ってしまった。そこからの部員たちの一致団結、〆のゴキブリ退治を兼ねた引っ越し劇までの展開は爽快極まりない。ただ、難点というか本作の限界は、肝心のアメリカンフットボールが面白く書けていないところ。作中で名作『坊っちゃん』を引き合いに出しているように、どしゃぶりの斜に構えた熱血漢ぶり(一人称)は堂に入っていて楽しめるが、試合になると専門用語が占め、素人に読ませる文章ではなくなる。工夫としては最後までルールに戸惑う登場人物を配すなりして欲しかったな、と。二章、三章はどしゃぶりの大学生生活編。個人的には、三章のクソ監督の窃盗劇に巻き込まれた出だしがアイディア賞。興味をグンと上げてくれた。快作には違いないが、それだけに同系統のスポーツ青春譚『風が強く吹いている』の好印象が増した。

第5回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:俺はどしゃぶり/須藤靖貴

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 須藤靖貴 小説新潮長編小説新人賞

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