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第7回本屋大賞 1位:天地明察/冲方丁

天地明察
1.一瞥即解
2.算法勝負
3.北極出地
4.授時暦
5.改暦請願
6.天地明察

answer.――― 79 点

―――からん、ころん。これが本作で用意した著者お得意のオノマトペで、元は絵馬のぶつかる音であり、改暦という一大事業を行う主人公の頭で鳴る、袋小路から抜ける開闢の合図だ。ライトノベルを出自に持つ著者が挑んだこの時代小説は、江戸時代に実在した才人・渋川春海を主人公にした物語。知名度としては決して高くないこの人物を何故に題材にしたのかと云えば、その経歴を知れば自ずと分かる。渋川春海は囲碁棋士であり、天文暦学者であり、―――そして、神道家である。デビュー作より一貫して「和」テイストを盛り込む著者が興味を持ったのは必然だろう。本作においても、神道「長」豆知識が披露される。……正直な話、私は著者が好きではない。巷では歓迎されているようだが、知識の「見せびらかし」が多過ぎる。話の流れを堰き止めてでも披露したいらしく、時には本当にそれだけで終わる場合さえある。エゴイスト、それが私の冲方丁に抱く作家像だ。しかし、本作は本屋大賞を戴冠しているように力作には違いなく、「時代」小説らしからぬ工夫が随所に見て取れる。それが冒頭のオノマトペの仕掛けであり、挿し込まれる図形であり、作中で十年を超す時間経過だ。音をここまで演出専用に扱う小説は珍しいし、図形は題材の堅苦しさを紛らわせるイラスト的意味に取れる。やはり、作家として「巧い」と評価せざるを得ない。改暦というイマイチ大事なのか分からないイベントだが、徳川光圀公を始めとした有名人たちが渋川春海に関わることで相応の迫力を得、また、終盤で展開される幾多の挫折から学んだ綿密な下交渉は痛快の一言。チャンバラがなく、そんな「動」的な派手さに欠けるものの、「静」的な読み応えは十分な一作。ただ、個人的には、日本数学史上最高の英雄・関孝和視点からの物語のほうが面白かった気がしないでもない。まあ、関孝和は神道を嗜んでないからね。神道を語りたいわけだから、しょうがないか。

第7回本屋大賞 1位:天地明察/冲方丁

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 冲方丁 本屋大賞

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