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電撃文庫:紫のクオリア/うえお久光

紫のクオリア
1.毬井についてのエトセトラ
2.1/1,000,000,000のキス
3.If
4.設定&おまけ4コマ

answer.――― 77 点

拙いな、という印象を飛び越えての「ライトノベル」的名作。「ライトノベル」的名作なる呼称を定義させてもらうと、文章が拙かったり、設定に矛盾があったり、不明な点が目立つために真面目に読もうとすると、……?となる作品ながら、批評眼が育っていない、自我芽生え始めた思春期に読むと、―――これは文学に比肩するんじゃないか!?と真剣に勘違いしてしまうライトノベルを指す。とどのつまり、「ライトノベル」的名作とは拙いながらも<文学>の要素を含んだ性質の悪いライトノベルである。そして、本作はまさにソレに該当する逸品。物語は「人間がロボットに見える」という少女・毬井ゆかりをキーパーソンに、その友人である波濤学(♀)を語り部として短編、SF界隈、ダ・ヴィンチ他の各雑誌で高評価を受けた中編、そして、その後日談的短編で構成されている。兎にも角にもクローズアップしたくなるのはやはり、中編「1/1,000,000,000のキス」だろう。親友である毬井ゆかりを襲う悲劇を回避する世界を求め、前章で手に入れた能力を駆使して、幾度となく、―――それこそ無限の選択肢をトライ&エラー、試していく学。この選択し、リセットしていく学の行動はまさしく<文学>で、読み手は粗い設定、粗い文章ながらに謎の深淵に引き込まれていく。<文学>とは人間を描くことであり、登場人物を介して己を見る行為だ。この作品は様ざまな観点で本当に<拙い>のだが、学を介して強制的に何度も人生を繰り返している点がダイナマイト級の仕掛け。端的に云えばこの中編を読むことで、読者は何度も「誤った」人生を追体験出来るのだ。そして、元の世界―――現実に戻れる。文学作品と言われるモノは総じてこの作品と同じ効果があるのだが、残念ながらエンターテイメント性が薄く、読み手にセンス、相応の経験が求められてしまう。本作では人間がロボットに見えたり、殺人鬼が現れたり、謎の組織に誘拐されたり、並行世界を行き来出来たり、……まあ、曖昧な<文学>なるものをうっすら理解出来るという意味で【推薦】しておきます。しかし、中高生に読ませると、本当にライトノベルばっか読む言い訳を与えさせる作品だな……。

電撃文庫:紫のクオリア/うえお久光 (2009) 【推薦】

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 うえお久光 推薦

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