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電撃文庫:ソウル・アンダーテイカー/中村恵里加

ソウル・アンダーテイカー
(あらすじ)
生者の魂を喰らい、死者の魂を引き寄せるハンニバル……主に忠義を尽くし主と共に死ぬ使い魔の常道から外れ、主に不義を働き主を冥府へと誘いながらも己のみは生き長らえるという死を招く猫。そんな使い魔の次なる主・江藤比呂緒は弱冠十二歳で、たぐいまれな霊的な素質を持っているが、とんでもない“大馬鹿者”で……。

answer.――― 76 点

<人間嫌い>の作家を思い浮かべてみると、私のなかでイの一番に浮かんでくるのは大江健三郎、我が国が誇る存命のノーベル賞作家その人である。彼の初期の代表作に数えられる『飼育』(第39回芥川賞受賞作)は子どもと黒人を仕掛けに、人間への憎悪をこれでもかとぶつけた力作だった。さて、本作はライトノベル界の“人間嫌い”中村恵里加による『ダブルブリッド』シリーズ完結の道程の最中(ここからが長いのだが……)にリリースされた一作。その内容は、12歳の誕生日を迎えたヒロインが父から贈られたプレゼントにより「魂の葬儀屋」ソウル・アンダーテイカーへの扉が開かれた、といったもの。兎にも角にも、<白痴>のヒロインである。本作では『ダブルブリッド』で垣間見せていた著者の“人間嫌い”を露骨なまでに提示してきた。ヒロインは幼少時のケガによる後遺症で、自他共に認める「馬鹿」となっている。本作は捲る頁、捲る頁、「馬鹿」が連呼される。主要登場人物たちの過去の「謎」を含めた負い目、そして、何より名もなき人間たちの仕打ちがとかく醜い。しかし本当に恐ろしいのは、読み手にそこまでの嫌悪感を抱かせないこと……<白痴>、ヒロインに己が不幸だとさえ気づかせない著者の演出である。よく「掴んでいる」。ライトノベルのフォーマットにソレを上手に濾過し、作品の雰囲気を統一している。実質、頁を進ませた求心力である過去の「謎」が明かされない点には不満が残るが、著者の一貫した創作姿勢を示す好作。ライトノベルにも、こういう作家がいなくちゃね。

電撃文庫:ソウル・アンダーテイカー/中村恵里加 (2005)

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 中村恵里加

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