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宝島社文庫:チーム・バチスタの栄光/海堂尊

チーム・バチスタの栄光
1.ネガ  ゆりかご
2.ポジ  白い棺
3.ホログラフ  幻想の城

answer.――― 88 点

『チーム・バチスタの崩壊』から『チーム・バチスタの栄光』へと改題されたように、海堂尊に処女作ながら『このミステリーがすごい!』大賞にて大賞(賞金:1200万円)の栄冠をもたらした快作。内容は当時、ドラマに漫画に、小説に……と流行りに流行っていた医療モノで、今や知らぬ者はいないだろうバチスタ手術を題材に医局政治、そこに絡んでくるエリートチームを襲う謎の連続術中死を解くミステリー。有名作故に他のレヴューサイトで語り尽くされていると思われるので、ストーリーの陰に隠れがちな著者の文章技巧について紹介してみる。やはり、特筆すべきは日を経過させながら、病院の外に登場人物たちを出さないことだろう。病院での描写しか本作には存在しない。そこに意味はあるのかと云えば、無い。ただ、自宅での描写などを描くと概して作中の緊張は欠けるもので(代替作用として、読み手が息をつける効能が生まれる)、舞台を極端に限定することは袋小路に放り込む窮屈な圧迫感を与えられる。景色が変わらず退屈を感じやすくもなるのだが、そこは斜に構えた言葉遊びで繋いでいく。著者のOh,米!なセンスフルな文章表現とチームの意表をつくパワーバランスもの静かに繋いでいく前半から後半は一転、唐突に現れる “火喰い鳥”ことシリーズもう一人の主人公・白鳥圭輔の投入で、作品は途端のキャラクターものに。この静から動への転換は圧巻で、予定していたなら大したもんだ、と舌打ちをしていたら、やっぱり偶然の産物らしく処女作らしい危うい制作背景が伺えた。小説家にとって大事なのは『出会い』だ。海堂尊は自分の内で白鳥圭輔に出会えたことで、10年の作家生活を約束された。前半を任された主人公では世間では埋もれてしまう。自分の筆に適したキャラクターを見つけられれば、物語はどんなにつまらなくても動く。動くことはそれだけで面白い。また、後半の主人公である“火喰い鳥”にストーリー的に役立たずとなった前半の主人公へ過大なまでのリスペクトを払わせている点も高等なテクニックとして挙げたい。ストーリーは実のところ凡庸なのに何故、面白く感じるのか?それは作中の登場人物たちに優劣、不等号をつけていくからなのだ。“火喰い鳥”は評価者で、海堂尊の筆はそれを描くのに向いていた。上下巻、合わせたレヴューです。

宝島社文庫:チーム・バチスタの栄光/海堂尊 (2004)

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 海堂尊

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