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幻冬舎文庫:暗いところで待ち合わせ/乙一

暗いところで待ち合わせ
(あらすじ)
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった。

answer.――― 77 点

紛れもない乙一の作家としての最高傑作であり、乙一の作家としての限界点を満天下に示した作品。本作のあとがきにて、前作でカットした一場面を一作品にしたのが本作、なる記述(要約)があるが、本作はまさに《一場面》の物語と呼ぶに相応しい異型の「長編」小説。本作の概要は、盲人の女性宅に殺人犯が忍び込み、一緒に生活する……ただ、それだけだ。前作「死にぞこないの青」に続く実質のドキュメントで、終盤に唐突に物語が展開され、着地する。構成で言うなれば「序盤」「中盤」「終盤」の三構成に分けられ、その中盤は物語が無いに等しい。しかし、この中盤こそが『乙一』の作家としての真骨頂だ。乙一とは何者なのか?ある人はグロテスクを描くという。ある人はセンチメンタルを描くという。前者に関して云えば、それはあくまでオプションであり、別に乙一でなくても書けることに気づいて頂きたい。しかし、後者に関して云えば、乙一はおよそ凡より秀で、秀でに優る書き手に数えて遜色ない。その評価に足り得るのも、言葉を呑み、物言わぬ内向的な登場人物たちの採用にある。本作中、一体、台詞は幾つあっただろうか?読了後、是非とも思い浮かべて欲しい。勿論、ある。しかし、貴方の記憶のどこにそれが残っている?―――「ありがとう」、思い浮かぶ台詞はこの言葉のはずである。逆に云えば、それ以外、何があっただろう?言葉を呑み、……そして、零す。センチメンタルの極意がここにあり、乙一はこれを修めている。「ありがとう」は、本作の『物語』に関係が無い。しかし、この台詞零れる『場面』こそ乙一が描きたかった場面なのだ。乙一は『場面』の作家なのである―――場面から創り、物語を付けるのだ。短編、中編では妙手と名を挙げられても、長編となると賛否が分かれる理由はここにある。一場面を一作品にした、この事実が図らずしも乙一の最高傑作を生み出した。あるいは、短編、あるいは中編で本作よりも質の高い作品を乙一はこれから創るかもしれない。しかし、物語を意識して創る常識に囚われているうちは本作を超えることは不可能だ。乙一自身、自らが長編を描けないことを自覚しており、富と押井守を手に入れてしまった現在、苦痛さえ伴うであろう「長編」小説の制作は敢えて行うことは少ないだろう。故に、本作が乙一の最高傑作な事実は揺らぐことはない。乙一という作家を知る上で外してはいけない欠陥的名作。1/3に省略出来るストーリーをその眼で確かめよ!

幻冬舎文庫:暗いところで待ち合わせ/乙一 (2002)

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 三大犯罪者 乙一

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