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第3回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:なんか島開拓誌/原岳人

なんか島開拓誌
(あらすじ)
明治の終わり……一旗あげんと新大陸を目指す人々を乗せた移民船が難破した。その際、したたか頭を打ちつけた船のボーイ・吉堀喜市はひょんなことから“生き神様”となり、超人的な能力を発揮し出した。南海に浮かぶ「なんか島」に流れ着いた男女十五人と天下無敵の生き神様の巻き起こす奇跡と珍騒動の数々。

answer.――― 69 点

本作の舞台である「なんか島」の住人・喜一郎なる少年が島から出ていこうとする冒頭に、この少年が主人公なんだな、と思えば、……時間が一気に遡り、表題通りの「なんか島」の開拓誌が始まる。本作は冒頭に登場する喜一郎の両親とその仲間、そして、喜一郎の名付け親であり、なんか島の“神様”喜市の物語。漂流しての未開の地への到着は当然、世界の名著「ロビンソン漂流記」を連想させるが、同作での孤独に喜怒哀楽してサバイヴするような展開は本作に無く、蔓を巻きつけて大木を切るなど“神様”によるご都合的奇跡で「なんか島」を開拓していく。少年少女たちはそれぞれ村長、神主、巫女、大工の役職を与えられ、困ったことがあれば、ドラえもーん!のように“神様”喜市が助けるというファンタジーと云えばまさにファンタジーながら、時代性を感じる一作。しかし、島の旧来の神たちを歓待、人喰いの原住民たちと交流、同じ難破船より上陸してきたゾンビと交戦など1エピソードのスケールが大きいにも関わらず、コンパクトにまとめられているので、意外なまでに読める。もっとも、頁をめくる一番の求心力は、少年少女の自尊心、嫉妬心が描かれていることだろう。作中、“神様”喜市は一神教を信じる外来人の策略によって退場してしまう。大胆な「転」開ながら、ドラえもんがいなくなったら面白くなるのがのび太たち(映画版)だ。神無き島での混乱は王道ながらに読み応えがあった。個人的に、まったく意味を感じなかった善玉の一神教の宣教師が幕も閉じようというその時、“神様”喜市より島に居付く許可を与えた意味を明かすところに作家としての腕を感じました。一神教を肯定的に描くならこうだよね。

第3回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:なんか島開拓誌/原岳人

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 60点 原岳人

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