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講談社文庫:風の歌を聴け/村上春樹

風の歌を聴け
(あらすじ)
一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。

answer.――― 85 点
大江健三郎以来のノーベル文学賞の受賞が事実上の既定ラインとさえなっている“世界の”の冠をかぶる村上と云えば村上春樹、その第22回群像新人文学賞を受賞した処女作。一言、―――熱い!おそらく、村上春樹の作品中随一の、あるいは唯一の熱がここに込められている。村上春樹というと、提示される題材を「やれやれ」と右から左に放り投げ、頁に余白を導いていく文章が印象的で、それを時間とノルマに追われる現代社会に「So Cool!」と歓迎されているのだと思うが、本作における文章は導いた余白に向けて「ここには何も無い(……いや、本当に何も無いのか?)」と第三者に否定を求める、そんな熱さが込められている。本作以降の作品群の余白には「ここには無い、……何も無い」と単にニヒルな意味以外を(少なくとも私には)感じることが出来ず、以降の作品で人気を獲得していくことを鑑みれば、そのスタイルこそが本来の春樹節、ハルキストたちの熱狂の源なのだろうが、それだけに処女作ならではの異色の輝きを私は本作に見い出してしまう。1970年21歳の時の8/8から8/26までの19日間の物語、という体で夜な夜な散文的に綴ったらしい制作背景からか、良くも悪くも随所に豊富なアイディアが盛り込まれている。取り上げるならば、「こんなのだ」とTシャツの絵を投げてきたところ、架空の作家デレク・ハートフィールドへのさもそれらしい言及の二点を挙げたい。前者はその投げやり加減をイラストの存在を前提に表現している点、後者はともすれば流れていくだけの話に注意を留める役割を担わせた点が素晴らしい。デレク・ハートフィールドに関しては、未だ存在しないと分かっているのに書店へ行けばその著作を探している私がいるお洒落酩酊な事実に刮目して頂きたい。何にせよ、―――熱い!と唸らせてくれるギラギラと照りつける灼熱の一作。個人的な意見だが、村上春樹はこの一作で筆を折って欲しかったな、と。後に初期三部作、「僕と鼠もの」シリーズと謳われる栄えある一作目でもある。

講談社文庫:風の歌を聴け/村上春樹 (1979)

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 村上春樹 「僕と鼠もの」シリーズ

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