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講談社文庫:羊をめぐる冒険/村上春樹

羊をめぐる冒険
(あらすじ)
1978年9月。「僕」の新しい「ガール・フレンド」は、「僕」に不思議な予言を告げる。「羊をめぐる冒険」が始まると。「僕」が「相棒」と共同経営している広告代理店に、大物右翼「先生」の秘書が現われた。彼は「特別な羊」を探せと、「僕」を脅迫する。その「羊」は、「僕」の会社で編集したPR誌上の風景写真に、偶然 写っていたのだった。

answer.――― 83 点
文学の薫りをまとう村上春樹の初期三部作、その最後を飾る大作。後に「僕と鼠もの」シリーズとしての結末をつける『ダンス・ダンス・ダンス』が発表されるが、一般的な見解としてのシリーズの完結は本作で迎えられる。文庫本・上下巻に分けてのリリースは商業的な意味合いもあるだろうが、それでも前二作と比してボリューム感満載の文章量を誇る事実を持つ本作は作中、不必要なまでに比喩を施し、あたかもと言わず、歴然とした村上春樹流の比喩の見本市―――文章表現への挑戦が伺える一作となっている。面白い比喩とは何か? この問いへ誰でも出来る簡潔な答えを出すならば、「事実」と「擬人」を並べることだと思う。例えば、「電池が切れて」「眠っている」ような時計、である。これをもう一歩進めるならば、それだけで《物語》を想起させる比喩―――例えば、《開始のゴング》の叩き方を忘れた時計、と私は考える。もちろん、人によって千差万別、正解は無限に等しい。それでも、自分の中でだけでも答えを出せなければ、外へ向けて【挑戦】は出来ない。本作において面白い比喩というものに対するイメージが掴めているからこそ、村上春樹はこうも大胆に披露出来るのだ。彼の比喩表現の核、それは「縮尺」と「食べ物」だ。後者の核に関しては、ライトノベルへと通じるものを見る……が、それはまた、別の話@王様のレストラン。表題の通り、ストーリーは一枚の写真に写った羊をめぐり、「僕」が会社を止め、大物政治家やらマフィア、ついには専用の続編まで編まれる人気キャラクター・羊男に辿り着くまでを描く。シリーズと謳いながら前二作と明確に違うのは、羊男のように、完全にファンタジーへと踏み出している点。それで違和感が無いのは、―――というよりそこを糾弾/追求されないのは、村上春樹が文学作家と言うよりも、そもそも、超級のファンタジー作家であることを見落とされているからだろう。……いや、マジで突っ込もうよ!羊男が出てきて、何で皆、受け入れてるのさ!?文学という石仮面をつけたまま、いよいよ作家としてのスタンドプレイに奔り始めた本当の意味での分岐点な一作。そこを抜きにしても、技巧ではない、センスであつらえた比喩表現を体感出来るので自分なりに盗んでみましょう。

講談社文庫:羊をめぐる冒険/村上春樹 (1982)

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 村上春樹 「僕と鼠もの」シリーズ

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コメント

たぶん

エッセイやルポを除けば、いちばん好きな村上作品です。
分岐点というのはその通りで、でもこれ以降は私には「やり過ぎ」に思えるんです。
世の中では彼の「進化」と捉えられてる点がどうも生理的に受け入れ難くて。
明らかにファンタジーなんだけど、ファンタジーとして描いていないところが当時は斬新でした。
あと、おっしゃられている比喩表現の魅力。これが心地よくて何度も読み返しました。
まぁ・・・でも10年くらい開いてないですね。読み返したくなりました。

彩月氷香 #b98C2Btc | URL | 2013/02/27 11:00 | edit

Re: 彩月氷香

コメント、有難うございます!

> エッセイやルポを除けば、いちばん好きな村上作品です。
> 分岐点というのはその通りで、でもこれ以降は私には「やり過ぎ」に思えるんです。

私は処女作が一番好きなのですが、一番ソレっぽさというか、読んでいて心地良いのは本作だと思いますね。女性好みの作品にも思えます。「やり過ぎ」、確かに「やり過ぎ」ですね。多分、私も同じようなニュアンスを以降の作品に抱いています。というか下手なんですよね、村上春樹。まともに書けば良いところを、自分の文章に拘って駄文が多いので、隠れてしまっている印象です。その辺、以降のレヴューで書いていこうと思っているので宜しければ覗いてくださいませ~。

> あと、おっしゃられている比喩表現の魅力。これが心地よくて何度も読み返しました。
> まぁ・・・でも10年くらい開いてないですね。読み返したくなりました。

読み返すと、印象違うかもしれませんよ(笑)ただ、この人、いつまでも(いつ読んでも)若いですよね。凄味を感じます。

Medeski #- | URL | 2013/02/27 16:46 | edit
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