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新潮文庫:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹

世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
(あらすじ)
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

answer.――― 76 点

―――村上春樹はライトノベル作家だ。という私のなかにあったいつからかの予感を現実に証明してくれた一作であり、村上春樹自身にとって実質、「初」の長編小説。さて、冒頭でいつからかの予感と濁したものの、いつからなのかは記憶している。私の村上春樹は『ねじまき鳥クロニコル』に始まる。そして、同作を薦めてきた陰気な女の子、ロックスターを地で行った高校の同級生から「最初のシーンを読んでいると、パスタを食べたくなる」と共にどっかの評論を鵜呑んだエピソードを聞かされ、(……ライトノベルみたいだな)と思ったことに端を発する。そして、パスタは全然食べたくならなかったが、そこは置いて―――本作は表題が暗示するように、「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の二部構成で、章ごとに世界観が入れ替わる。それぞれの章は村上春樹の代名詞とも云える「僕」視点、ハードボイルドな「私」視点で描かれているのも特徴。一見と言わず、まったく無関係に感じて苛立ちさえ抱く双方の世界が徐々に重なり合っていくのはそうと予想はしつつも圧巻で、出版から三十年を経ようという現在でも指折りと断じても構わないスケール感が溢れる。しかしながら、駄文が非常に多いのが難点。意図が不明な文章、描写が多く、後に語るように「リズムを意識して書いている」故の弊害が見て取れる。「私」視点は書き慣れてないためか特にそれが顕著で、作家としての甘えにも映った。実際、名も無き作家の作品として取り扱われれば、冒頭からの数頁で読まれない可能性が高いだろう。しかし、―――だ。この作品を受賞作、それも文学作品として扱うと、途端に評価は覆る。村上春樹とは何者なのか? 私は本稿の冒頭で、ライトノベル作家、と書いたが、それは揶揄でも何でもない。文学として読むならば、本作はあまりに面白過ぎるのだ。「人間を描く」文学はそもそも興味深いものであって、面白いものではない。読み手はそれを知っているからつまらないと決めつけて読む。しかし、本作では一角獣の骨やら「計算士」「記号士」なる職業、影を剥がれるやら「夢読み」なる職業に就くやらの、ファンタジーのど真ん中を行く。文学なのに、である。そして、本作が出版されたのは1985年、ライトノベルが「ライトノベル」と呼ばれ始めたのが90年代初頭、つまりはそういうことなのだ。また、村上春樹の筆の特徴に、困ったときのペニス頼み、困ったときの食事頼みがあることを挙げておきたい。前者は文学的素養から、後者はライトノベル的素養からのアプローチで、筆の拙さゆえに物語が停滞すると確信犯的に打ってくるのが(笑)だ。上巻/下巻、合わせてのレヴューです。

新潮文庫:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹 (1985)

category: ま行の作家

tag: OPEN 村上春樹 70点

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