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新潮文庫:ねじまき鳥クロニクル/村上春樹

ねじまき鳥クロニクル
第1部 泥棒かささぎ編
第2部 予言する鳥編
第3部 鳥刺し男編

answer.――― 89 点

「最初のシーンを読んでいると、パスタを食べたくなる」―――多分にブラフにせよ、読み手にそんなことを言わしめる冒頭を持つ本作は、ライトノベルに退屈を覚え始めた貴族の諸氏(ライトノベラー)に新たな地平を見せる純文学ならぬ準文学、ライトノベルならぬ準ライトノベルな快作。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の稿にて、―――村上春樹はライトノベル作家だ。なる一文を提示させてもらったが、ここで改めてその一文の補足をさせて貰おう。今でこそ「パンツ」と「裸」の披露はライトノベル世界における最高法規として遵守を命じられているが、90年代において「パンツ」と「裸」よりもライトノベル「らしさ」を担っていた要素に「食事」場面の挿入があったのは間違いない。それらの場面は目先のパンツを前に省略化の傾向があるが、今現在を以っても、……推して知るべし!の効能を持つ。ライトノベルを何故、読むのか?ライトノベルを何故、読みたいのか?書き手はよく考えてみて欲しい。編集部は三大欲求である「性欲」に焦点に当てているだけに過ぎないのだ。温故知新!ワナビーよ、登場人物たちにメシを食わせてみよ!されば、扉は開かれん!さて、文学作家の仮面をかぶるタキシード仮面様こと天才ライトノベル作家・村上春樹が放つ本作は、突然の妻の失踪から始まるファンタジックなミステリー。物語は突然、始まってこそ面白い―――村上春樹はその神髄をよく理解している。謎めく妻の理由無き失踪から始まり、不貞を働いていた予感、それでもどこか純愛を匂わせ、(読み手に)嫉妬を煽る―――現代が舞台、なのにファンタジー。主人公は朴訥に無職、なのにクールな探偵のように静かに動き回るストーリー展開は秀逸だ。女性ライトノベラーが強く己を投影するだろう笠原メイは作中の実質MVPで、書き手は彼女を解体することで知り得ることは多いだろう。主人公を井戸に放置する手際は、もはや神業だ。評論では戦争を扱ったことがクローズアップされるが、そこが物語の進行上で一番の蛇足に感じるも(野暮ったいし、読ませようという工夫も放棄している)、「文学」観点での目くらましには必要不可欠な必要悪だったと云える。《ねじまき鳥》というマスコットまで用意する手の込みようは、『ノルウェイの森』で終わらない著者の意志表示にも思える。とどのつまり、キャッチーの一言に尽きる一作。「文学」「大衆小説」「ライトノベル」の三者が組み合う様を楽しみましょう。きっと、女の子が中学生時点でこれを読んじゃうと(……あ、私って笠原メイだ!)って思い込んで、そこからハルキストになっちゃうのよねえ……。第1部、第2部、第3部の全3巻を合わせたレヴューです。

新潮文庫:ねじまき鳥クロニクル/村上春樹 (1995)

category: ま行の作家

tag: OPEN 村上春樹 80点

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