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新潮文庫:海辺のカフカ/村上春樹

海辺のカフカ
(あらすじ)
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。

answer.――― 70 点

一言、引用し過ぎ!と切って捨てたい本作は、一見さんお断りなI'm Haruki Murakami!Say,Haruki?Yeah!Say,Murakami?Yeah!Say,yeah?Yeeeeaaaahhhh!な一作。ストーリーは自立を願う15歳の「僕」、戦時中のとある事件以来、記憶と読み書きの能力を全て失った老人ナカタさんの二視点で語られる……が、本作を読むにあたり、「楽しむために」絶対不可避と言わざるを得ないのは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の既読前提。この前提が無いと、「僕」視点でのストーリーパートは退屈極まりないものとなる。困ったときのペニス頼み(今回はVer.包皮)、セックス描写も挿し込んでくるが、それでさえ誤魔化せないお手上げの退屈さは、著者自身も「物語の解釈は個人個人で……」と口を閉ざし、読み手に深淵なものとして扱うように推奨している。上述で「引用し過ぎ!」と唾棄したように、事あるごとに漱石やらルソーやらの偉人の作品、言葉を取り出し、……とりあえず、取り上げ方に一貫性を感じないのが最大の問題。仮にも“世界の”の冠をかぶっているんだから時代性くらいは縛って欲しかった。村上春樹が(なんちゃって!)インテリゲンチャに毛嫌いされるのは、登場人物を介した教唆的な節回しにあるように思うが、本作ではそれが爆発している印象。本作での「面白い」の免罪符は「猫と喋れる」老人ナカタさん視点に任されている。UFOに誘拐され、すべてを失ったと思わせる書き口、そこから自作世界「世界の終り」に繋げてくる辺りは斬新で、生半可な作家では出来ないスケール大きな芸当だ。が、終盤はその自作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の読み込みを当て込んだ不親切なもので、一作品として評価する場合、これを誉めるわけにはいかない。あるいは、そういう作家……自作「全」作品を繋げる作家を目指しているのかもしれないが、にしても、色々がお粗末だ。著者自身がRadioheadを聞き込んでいた時期の作品なので、本作中でも出された『Kid A』を真似て、このようなパッチワーク的創作をしたのかもしれない。クラシックを始めとした音楽ネタもいよいよ趣味が高じて円熟し、絶好調!となって著者が随所でズイッ……と語って来る部分も散見出来る本作は、とりあえず、ファン以外にはお薦め出来ない一作であることは確かだ。上巻/下巻、合わせてのレヴューです。

新潮文庫:海辺のカフカ/村上春樹 (2002)

category: ま行の作家

tag: OPEN 村上春樹 70点

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