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新潮文庫:家族八景/筒井康隆

家族八景
1.無風地帯
2.澱の呪縛
3.青春讃歌
4.水蜜桃
5.紅蓮菩薩
6.芝生は緑
7.日曜画家
8.亡母信仰

answer.――― 86 点

筒井康隆の、筒井康隆による、筒井康隆と読者のための七瀬三部作、その第一弾。筒井康隆はプロとアマ、両面の資質が混在する希有な作家だが、80年代以降の作品群は概して「文学」を旗印としたアマチュア的資質を爆発させたものが占め、それらに対する「傑作」「代表作」「新境地」といった無責任な触れ込みを信じて手に取ってしまうと、筒井康隆という作家像を見誤ってしまう恐れがある。筒井康隆を読むならば、知名度高い『時をかける少女』でも、悪質なまでにアマチュアリズムを結晶化した『虚人たち』でも、ましてや筒井流のライトノベル『ビアンカ・オーバースタディ』でもなく、人の心を読めてしまう「テレパス」火田七瀬を主人公とした七瀬三部作から始めることを強く推奨する。中でも連作短編という形を採用する本作は読みやすく、その内容も勧善懲悪にも似た因果応報、概して業火に焼かれる登場人物たちの様に暗い満足感を得る仕上がりとなっている。シリーズ第一弾ということを抜きにしても、一番大衆受けしやすい作品だろう。表題に「八景」とあるように、概要としてはテレパスの少女・火田七瀬が住み込みの家政婦として八つの家庭を覗いていくというもの。頁をめくる求心力は、基本的にエロティックなこと。作中の登場人物(♂)、ほぼすべてが七瀬を手篭めにしようと心中で画策、妄想している。そして、このもはや「雄」とも云える男たちの短絡的な心理描写、何気に的確である。これらは誇張ですらない。男の頭の中は本当にこんなものなので、男の本音を知りたいJC(女子中学生)、JK(女子高生)、JD(女子大学生)は保健体育の教科書として採用するのも良いだろう。男連中はハラハラ(……ウヒヒヒ)!と喉を渇かせ(舌舐めずりし)、七瀬が犯されそうになる場面を素直に楽しみましょう。臭いを扱った「澱の呪縛」など、エロとセットの、筒井康隆と云えば、―――なグロも各話もちろん注入済み。プロフェッショナルなエンターテイメント性と「―――」を用いた文章へのアマチュア的実験性を兼ね合わせた秀作。あえてベストを挙げるなら、第四話「水蜜桃」かな?文章的にその時には盛り過ぎに感じても、結局、時間経過で薄れる記憶には過剰なくらいの方がよく残るのよね。

新潮文庫:家族八景/筒井康隆 (1972)

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 筒井康隆 七瀬三部作

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