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第9回ファンタジア大賞 準入選:ドラゴンズ・ウィル/榊一郎

ドラゴンズ・ウィル
1.英雄の条件
2.見えざる束縛
3.魔獣王達の憂鬱
4.最後の英雄
5.終章

answer.――― 72 点

ライトノベルは不当な評価を受けている、という風潮があるが、実際はその逆で、ライトノベルは過大に評価されつつある、というのが私見だ。その正否は求められるものではないが、例えば本作のような作品が異端に映る間は、少なくともライトノベルはあくまでティーンのためのジャンルなのだと思う。小説からアニメの脚本、そして、専修学校の講師まで務めるライトノベル界のドラゴン桜・榊一郎。本作は、そんな氏のインテリジェンス薫るデビュー作。一読して気づくのは実質、場面が一対一で構成されている点。この珍しい構成の意図は「問答」で、読み手は知らず著者の問い掛けを清聴していることになる。しかし、一対一……物語そっちのけにもなりかねない「問答」は読み手がいつ気づいて、いつ冷めてもおかしくないギャンブルな造りでありながら、今を以って思い出の名作に挙げられる本作の凄味は、それと気づかず読み終わらせてしまうことにある。榊一郎が施した工夫、それはドラゴンを物語の中核に配したことに尽きる。ドラゴンの語り(思考)、ただそれだけで人は面白く感じられる―――自分の投影先が無いことを我慢出来る。本作は、著者しか存在しない未だライトノベルにおいて稀な逸品。ドラゴンを菜食主義にしたこと、それを倒しに来た少女をヘッポコにしたこと、真逆の性格の竜(♀)を挟んでくること、適宜挿し込まれる戦闘、国家的陰謀……もちろん、これらはスパイスではある。しかしながら読み手の感情移入先が無い、ある種、欠陥品とも云える本作を成立させているのは、語り手が「絶対者」ドラゴンだからに他ならない。思慮深いドラゴン(その正体は、……榊一郎!)を前にしているからこそ、読み手@いつもは無敵の主人公!は黙っていられるのだ。安易なハッピーエンドにせず、伏して終わるのも「問答」作品として相応しいエンディングだ。本作出版当時よりライトノベルが「個」を描くことに傾倒してきた現在、名も無き兵隊が操る戦車が町を焼く戦闘描写はスケールこそ大きいものの、大雑把で陳腐にも映る。この辺は、時代の流れを感じるね。軽妙な、それでいて安過ぎない文章を含め、「問答」作品のお手本な良作です。

第9回ファンタジア大賞 準入選:ドラゴンズ・ウィル/榊一郎

category: さ行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 70点 榊一郎

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コメント

こんにちは

これ!過去に読もうと思った事があったけど、なんやかんやで結局読まなかった作品です。
ひさびさに目にして思い出しました(^^)

無様な愚か者 #9Y4Pxtr. | URL | 2013/07/14 21:31 | edit

Re: 無様な愚か者

コメント、あざーす!

なんやかんやで読まない作品って、めちゃくちゃ多いですよね。読むと自分のキャリアが上がるような作品、例えば古典ですと、読もうかな?と最後のひと押しになるんですが、ライトノベルだとそうそう起こり得ない現象。でも、本作、ラノベの新古典的扱いを受けてもおかしくないので読んで損は無いと思います。なんて、今年に入って初めて榊一郎を読んだメデスキいわく。

Medeski #- | URL | 2013/07/19 14:40 | edit
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