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電撃文庫:フルスケール・サマー/永島裕士

フルスケールサマー
1.夏休みまで
2.孤独のファンタジスタ
3.有明へ!
4.最終予選
5.模型部の終焉

answer.――― 65 点

地の文を飛ばし、「台詞」だけを追う―――その人の作家としての才能を量るなら、単純な方法としてそんな方法がある。台詞だけを追って、ストーリーを、キャラクターを把握出来、尚且つ、「面白げ」に思えるならば、その人は少なくとも作家を目指すだけの才能、資格があるだろう。逆にそれが出来ず、「面白げ」に思えなかったならば、……その人には本当の意味での文章力が求められる。エンタテイメント作品は結局、台詞が鍵を握る。そして、台詞は努力では誤魔化し切れない瞬発的な、持って生まれた才能が発露する場なのだ。夏の始め、転入をキッカケに優等生一筋だった己を変えようとする北条慶介が出会ったのは廃部寸前の「模型部」に所属する奇妙な少女たちだった。生徒会に理不尽に追い込まれる模型部を見兼ね、―――では、この場を借り、私は生徒会執行部に“原寸模型部”の設立を申請する!と啖呵を切る主人公にまずは拍手を。昨今、似通うライトノベルの主人公像の中にあって、本作の主人公は己の真面目を否定し、しかし真面目が抜けず、その真面目さ故に物語が進んでいくという《自己否定》を隠し味にした、隙間を突くグッドデザイン賞な造形。上述の啖呵も安過ぎ高過ぎずの出来で、高校生の領分をはみ出ない、生徒会執行部との詭弁対決を予感させてくれた。そう、著者、……台詞が心地良い。冒頭30頁は著者の秘めし才能、その見本市だ。台詞支える地の文の安定感もあり、おっととっと夏だぜ!と愉快な拾い物をした気分で頁を捲らせてもらったが、如何せん、―――長い。前のめりのあとがき含めての385頁。模型部の実績作りの紆余曲折、あらすじにしてみれば各イベントそれ自体は必要に思えるが、それがどうしてこんなに長くなるのか?本作、著者の要らぬエゴがある。それは「夏」であり、メインヒロイン「春日野鮎美」だ。前者に関しては「模型部」だけで勝負出来ると云えば伝わるだろう。後者は根が深く、おそらくスタンダードに話を組めば「春日野鮎美」とストーリー上のヒロイン「マナ」は一つであったはずなのだが、役割をあえて分割されている。メインヒロインが一人増えるのだから頁がかさむのは必然だ。ラストシーン、マナという名(と境遇)の春日野鮎美が全校生徒の胸を打つべきだったのではないだろうか?そんなこんなで何とも勿体無い、体重超過の良作。贅肉を削いだとき、著者と読者は同じモノを読める。その点、模型への拘りで不快感を感じさせなかったのは〇。

電撃文庫:フルスケール・サマー/永島裕士 (2013)

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 永島裕士

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