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ソノラマ文庫:吸血鬼ハンター 風立ちて"D"/菊地秀行

風立ちてD
(あらすじ)
辺境の村ツェペシュの外れには、特殊な防衛機構が働いて村人の立ち入りを拒む奇怪な丘がある。その頂にはかつて“貴族”の居城があり、今もなお、膨大な機械装置群が残されている。だが、そこで貴族が何を実験していたか。十年前に城跡で行方不明になった子供がどういう運命を辿ったか、すべては謎のままだ。そして今、村は陽光の下を徘徊する吸血鬼の出現に怯えていた。

answer.――― 71 点

一人称の発展著しい現在、三人称を用いた作品(特に過去作)、それに影響受けたであろう作家の文章を私は時折り、恐竜、という言葉で評することがあるが、―――これ、まさに恐竜!と指差して触れ回りたくなる本作は、「吸血鬼ハンターD」シリーズ、その第二弾。シリーズ作品で作家をまず悩ますのは前作からの説明の処理だと思うが、(……うおっ!?)とビーンボールを投げられたようにのけ反り気味に驚いたのは、既読大前提の説明を省いたストロングスタイル。ダンピール、人面瘡、作中世界の状況はご存じの通りと流し、紹介を兼ねた設定を説(解)いていった前作と打って変わって、本作ではより単発の、シリーズな謎に迫っていく形にシフトしている。今回の謎は「貴族」を退治すべく“D”は再び雇われたが、その「貴族」は陽光の下でも動けるという、それまでの常識を覆す「貴族」だった!というもの。前作に倣い、雇われた先でアクション!の展開に待つのは「貴族」についての説明をメインに、快活なヒロインとの邂逅と別離、そこから名も無き少年の意志表明によって“D”を微笑ませるまでの軌跡。もはや辞書に葬られている言葉、「速さ」度外視の文章、当たり前に虐待、当然に差別、必然の悲劇の世界で感情揺れ動かない“D”のミックスによって、まさに現代で見掛けることのない「恐竜」と対峙している感覚に陥った。ミステリーとしてはやや不親切な仕掛けも多く、カタルシスという観点では△な出来に思えるが、それでも、最後に“D”の微笑みを授かった瞬間、ここまで行程が報われた思いに。一登場人物の表情で〆るのは王道ながらに難しいものだが、本作は読み疲れの疲労感まで味方につけて◎の出来。寡黙で気障な主人公の鉄板な幕引きです。

ソノラマ文庫:吸血鬼ハンター 風立ちて"D"/菊地秀行 (1984)

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 菊地秀行 吸血鬼ハンターD

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