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第24回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:絶対服従者/ 関俊介

絶対服従者
(あらすじ)
突然変異で高度な知性を備えたハチやアリがヒトの代わりに働き、失業者が溢れる街で、おぞましい秘密工場の存在を知ってしまった俺。長期政権で街を牛耳る市長の悪事を暴くべく、決死の闘いから生還した先に待っていたのは、苦痛に満ちた絶対服従の日々であった――。異色のノンストップ昆虫SFバイオレンス劇。

answer.――― 82 点

『歪む教室』で角川学園小説大賞《金賞》を受賞し、デビュー!も、そこから先へ繋がらず、次作もまた打ち切られ、……よくあるデビュー、よくあるセールス不振、専業、兼業、そうして、「I'll be back...」と捨て台詞を吐いてドロップ!という凡百凡千の作家《お決まり》の流れに逆らい、第24回日本ファンタジーノベル大賞《優秀賞》を受賞して、再びメインストリートへ挑み直す「成らず者」関俊介。汚名返上をかけて編まれた本作は、知性を持った虫が労働者として人に代わる街が舞台。失業者溢れる街で、主人公は暗い心地のままにルポライターとしてその虫に携わって生活を営んでいたが、奇妙な依頼から街の「裏側」を知る……というストーリーライン。これから長く時事ネタになり続けるだろう雇用問題をファンタジーでアレンジし、社会派なテーマをライトにしているのが特徴で、その中で特に面白い試みと云えるのが、偽悪的と評される主人公の「一人称」。地の文でひたすら人称を省く様は一部選考委員、読者より「乱暴」「下手」と斬られるが、個人的に非常に「モダン」に感じた。現代、文章に求められるのは「軽さ」という表現に隠された「速さ」であり、読み手に如何にその速度を「体感」させるかが鍵を握る。著者は見事にソレを方法論として修得している印象。もっとも、そんな「速さ」の観点を除いても、この文体は職にあぶれ、荒んだ主人公の心中を上手く表現出来る書き口。ながら、本作の醍醐味は社会風刺や「蟻」「蜂」の擬人化、文章などテクニカルな部分では勿論なく、単純明快な逃亡劇にある。―――疾走に次ぐ疾走。「アリ工場」なる奴隷生産を目撃してしまったことから切って下ろされるスリリングなNEEDLED 24/7!はおよそハードボイルドなイヴェント目白押しで、ハルニレの蜜を持って蜂の巣となった廃墟へ向かうところでピークを迎える。人間の女性キャラクターは見事に登場しないが、途中より用心棒として配されるキイロスズメバチは、著者のライトノベル出自の意地を見せてくれる良質な“ツンデレ”ヒロイン。ラストの大人な別れの演出は、読み手の続編の希望を断ってくれるセンチメンタルなグッドシーンだ。虫の擬人化に関して詰めの甘さを指摘されるように、「文学」を兼ねる(らしい)日本ファンタジーノベル大賞の受賞作としてはややディテール不足は否めないが、補って余りあるエンターテイメントが本作にはある。地の文に「俺」が出てくるとき、……このままじゃ終われないよ!という著者の隠された咆哮も良い。本作、【推薦】させて頂きます。

第24回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:絶対服従者/関俊介  【推薦】

category: さ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 80点 関俊介 推薦

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