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第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:増大派に告ぐ/小田雅久仁

増大派に告ぐ
(あらすじ)
親に虐待される14歳、誇大妄想に囚われるホームレス。うらさびしい巨大な団地で孤独な魂がこすれ合い、喜びと憎しみの火花を散らす。男がつぶやく「増大派」とは、いったい誰のことなのか? じわじわと厭な気持ちになるのに、ページをめくる手が止まらない! 狂気に憧れたことのあるすべての人へ贈る挑戦状的作品。

answer.――― 75 点

誇大妄想にとりつかれたホームレス、どうしようもなく狂気に惹かれる14歳の少年の二人の視点で描く「人の底」な物語。本作にいわゆるファンタジーらしいファンタジーは無く、「壊れた」大人と「壊れかけ」の少年のひたすら陰鬱な言葉が連ねられていく。双方に共通するのは父から端を発した転落で、救いのない展開、思考の変遷など、選考委員が著者へ純文学の転向を期待、促すなりの説得力のあるものとなっている。もっとも、回想を除けば、「壊れた」大人の増大派が云々という思考吐露は排便を垂れ流すような嫌悪感の演出でしかなく、それがセールスポイントであるとはいえ、如何せん、思考それ自体に意味が無いので読み続けるのは苦痛だ。となると、やはり、本作のメインは「壊れかけ」の少年パート。自分のこれから先―――辿り着く先が、世間が倦んでいる「壊れた」大人である予感、そして、それを回避することが難しい絶望を、小便と来たら大便と繋げるリミッターを外したどす黒い語彙で紡いでいく。少年の顔の傷痕、いつしか離れた悪友、己を虐待する父の悪事など、少年が抱え込んでいる《事情》は終盤に全て明かされる。この辺が純文学特有の秘すれば、……とは一線を画す造り方で、お高く止まらずの歓迎したい著者のエンターテイナーぶり。個人的ハイライトは、少年が父親の怒りを買い、ガラスに頭を突っ込みながらも狂ったように嗤った《事情》。まさかの救いの演出とは思わなんだ。とりあえず、(―――俺は気狂い!このどす黒い想いをどうすりゃいいんだ!?)という自負を抱えて悩める中二病罹患者は、そのどす黒い想いのままに筆を執ればこれくらいの文章が書けるはずなので、いっそどす黒い作家になってみたら如何でしょうか。

第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:増大派に告ぐ/小田雅久仁

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 小田雅久仁

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