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第14回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:戒/小山歩

戒
第一部 小屋に住む戒
第二部 宮殿に住む戒

answer.――― 84 点

死後にまで主君に仇なした不義不忠の大逆臣・延戒の墓が見つかった―――冒頭の数頁で、これでもか!と現代人たちより唾棄、怨嗟の対象として描かれる、存在さえ疑われた歴史上の人物・延戒の(本当は……)な読み手だけへ贈られる真相解明がストーリーラインの本作。「戒より始めよ」というパロディなリード文にこそ辟易させられるものの、いざ過去への幕が上がれば、幼少期に母より与えられたトラウマにより、己を偽り続ける当代最高の才人の悲劇は胸躍らずにはいられない。共に育てられた王子より常に一歩遅れを取らねばならぬ枷、隠し切れぬ才能をその溢れる才能をもって見事に隠し通し、将来を、恋さえ諦め、舞舞いという宮中のピエロとして生きる様、あまつさえ凡才である王子を遊戯を通して名君へと育てようと試み、臣民に演出し、取巻きから嫉妬を受ければ、その相手さえ立てつつ、―――と、やること為すことウルトラGの戒の主人公っぷりは悲劇に辿り着くと理解していても心地良い。前半のハイライトに挙げられるだろう敵国への単独(?)侵入劇は、―――俺(=戒=読み手)という超天才がガキに負けたよ―――と誇り高き遺児たちの決意を正面から受け止められる珠玉の場面。これだけで本作は「買える」だろう。そうして、第二部は、いよいよ「戒より始めよ」が実践に移され、まさかの異人との結婚、国に集まる才人たちより注がれる敬意、報われ始めた己に相応しい宰相としての人生。―――しかし、再びトラウマが運命を狂わせる。本作に対する選考委員の評は悪辣だが、これはもはや難癖に近く、後の第20回の『彼女の知らない彼女』に贈ったあの気持ち悪いまでの激賞を考えれば、読んでうっかり楽しんでしまった自分を戒める発言のように解釈出来る。そう、本作はインテリを自認する者にとっては認めてはいけない中途半端なインテリジェンスを感じさせるファンタジー。しかしながら、各場面における演出はどれも目を惹くのも事実。母へのトラウマに固執する不要なファンタジーのために荒削りという結論は否めないが、……要はNirvanaの1stアルバムみたいなもんだ。次は「Nevermind」、気にすんな。『ロードス島伝説』が好きなライトノベラーならば、本作の戒にナシェルを重ねることでしょう―――W La TENSAI!悲劇が好きな方は是非、御一読を。

第14回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:戒/小山歩

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 80点 小山歩

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