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第6回本屋大賞 6位:新世界より/貴志祐介

新世界より
1.若葉の季節
2.夏闇
3.深秋
4.冬の遠雷
5.劫火
6.闇に燃えし篝火は

answer.――― 94 点

読書中、そして、読了後……私の中でついて回った本作の感想は「何が面白いのか解らない」だった。面白い、―――とは何か?端的に、それは《矛盾》していることだと思う。マクロ視点で如何に「美しい」矛盾を成立させるかでストーリーの出来は決まり、ミクロ視点では世界に、そして、登場人物に「許されざる」矛盾を抱えさせることでドラマ(場面)を生み、それらをストーリーへ帰結させる……というのが私の中でのインスタントな「面白い」の解答式なのだが、京大三銃士を統べる“Führer” 貴志祐介の最高傑作とさえ謳われる本作「新世界より」は、そんな私の表現式の極大値を叩き出したスペクタル巨編。ただの日常、平和の一コマを描写しているだけにもかかわらず、それがあたかも恐怖場面と確信させるホラー・コーティングは一体全体、どうやって創ったのか?「設定」からもたらされたものなのか?「文章」から滲み出されたものなのか?その「両方」を伴って成立するものなのか?あるいは、それらと全く関係の無い「何か」が軸となっているのか?私程度ではもはや判別がつけられない。多くの創作物は突出した「何か」がある。欠けてはいけないピースがある。しかし、本作はキャラクターを含め、突出したソレが無い。これが本稿冒頭の「何が面白いのか解らない」に繋がる。本作、一つ一つの設定は何てことはないのだ。にもかかわらず、組み上がってみるとおどろおどろしい、極彩色の世界が、―――《矛盾》が成立している。本作はそうそうお目に掛かれない、複合的な「面白い」で綴られた逸品。出来上がったものを読んで「面白い」っていうのは簡単だと思う。でも、これ、「〇×だから面白い」って単純な確信を持って書ける類のものじゃないからその辺を俺 、マジ“Führer”Respect。まあ、人によってはあまりに多過ぎる頁数が玉に瑕かもしれない。ちなみに、本作の1章「若葉の季節」での長い作中歌は読まなくて良いだろう。著者自身も読み手が「飛ばす」前提で、「歌」終わりにその概要を親切にまとめてくれている。エンタメ作家の鑑ネ。単行本で上下巻、合わせてのレヴューです。

第6回本屋大賞 6位:新世界より/貴志祐介

category: か行の作家

tag: OPEN 90点 貴志祐介

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コメント

何が面白いのか解らない小説

少し前にこの小説を読んだのですが、すごく面白いのだけれど「何が面白いのか解らない」というのはとて的確な表現だと思います。
私は「すごく面白いのに、何かが足りない」と感じました。
よく練り上げた独創的なプロットと世界観、SF、ファンタジー、ミステリー、ホラー、アドベンチャー小説の良いとこどりでスリル満点な舞台設定、それでいて難解な説明文に終始しないテンポの良さ、といった「うまく読ませる」テクニックに長けた作品。
ある意味、とてもよくコントロールされた小説で、そのせいか、すべての登場人物の言動が、あまりに人間的でないのが、個人的に私が「足りない」と感じた部分かな、と思ったりしています。
なんとなく、ロボットっぽい、というのか、全員が全員、著者の操り人形的な動きで、誰にも全く共感できないまま終わってしまったんですよね。
といいつつ、読んでいる間は面白くて一気読みしたんですけど。

ちゃき #mQop/nM. | URL | 2015/08/09 23:13 | edit

Re: ちゃき

コメント、アリガトございまーす!


> 私は「すごく面白いのに、何かが足りない」と感じました。
> ある意味、とてもよくコントロールされた小説で、そのせいか、すべての登場人物の言動が、あまりに人間的でないのが、個人的に私が「足りない」と感じた部分かな、と思ったりしています。

人間的でないっていうのが、もしかすると、私が「ホラー」を感じた部分なのかもしれないですね。この作品、実際、情緒的な描写があるにはあるのですが、それがまさに「機械的」なんですよね。生き残っていることに感動した!という歓びが、そのまま吐露されることがなかった印象があります。大体が、良かったけど、……何で?を付けて次の頁へ誘導してますよね。

> といいつつ、読んでいる間は面白くて一気読みしたんですけど。

一気読みしちゃいますよね。私も本当にこの事実に驚かされました。

Medeski #- | URL | 2015/08/10 18:28 | edit
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