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第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

のぼうの城
周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍城。領主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれ、親しまれる人物であった。智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!

answer.――― 83 点

概して、登場人物を魅力的に描け、というと、その登場人物「自身」に焦点を絞って煮詰めてしまうものだが、「智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!」なるキャッチコピーを与えられた「のぼう様」こと成田長親を主人公にした本作は、登場人物を魅力的に描け、という課題がもはや難題化している作家(志望含む)に一石を投じてくれるだろう一作。上記のキャッチコピーからもお察しの通り、この成田長親は「のび太」だ。勿論、ただの「のび太」ではなく、劇場版「のび太」だ。ただ、―――まったく新しい英傑、現る!とおNewであることを大層謳われているのは何故かと云えば、実際問題、小説で劇場版「のび太」を再現する困難さ故。劇場版「のび太」を演出するためにはまず日常の「のび太」を演出しなければならない。が、いざ取り掛かってみて戸惑うだろうことは、「のび太」をそのまま描くと全く魅力的に描けない事実だろう。だからといって、小説特有の十八番的アレンジ―――心内文、地の文で(……馬鹿じゃないんですよ?)とカバーすればするほど、「のび太」らしくならない。むしろ、それではもはや「のび太」ではなくなってしまう矛盾。では、どうすればいいのか?本作に、その答えがあるように思う。本作は《視点》の工夫、及び歴史という裏付けを以って劇場版「のび太」を成立させた秀作。成田長親の表情は豊かだ。成田長親の行動は幼い。しかし、そんな「のび太」な彼を語っているのはそんな先入観持つ《視点》者だ。そうして、そこに絡んでくるのは読み手は開始数頁で結末まで知っている仕掛け。淡々とした書き口なる評も目立つが、それは歴史面から「劇場版」のび太を―――おNewな主人公を成立させるための弊害なので仕方がない。与えられていく「のび太」な先入観、しかし、すでに知っているただの「のび太」であるはずがない結末との齟齬。それを埋める頁捲りこそ本作の醍醐味と云える。新しい英傑、現る!というよりも、新しく「映る」工夫が随所に施された一作。テンプレ通りの登場人物しか作れない、と云う非難が向けられたなら、それは実は読み手に《先入観》を与えられる特技だと本作を読んで気づいてみよう。

第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 80点 和田竜

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コメント

第一稿

概して、登場人物を魅力的に描け、というと、その登場人物「自身」に焦点を絞って煮詰めてしまうものだが、「智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!」なるキャッチコピーを与えられた「のぼう様」こと成田長親を主人公にした本作は、登場人物を魅力的に描け、という課題がもはや難題化している作家(志望含む)に一石を投じてくれるだろう一作。物語の概要は、馬にも乗れない不器用極まる愚鈍さに「でくのぼう」、略して「のぼう様」と呼ばれて足軽・百姓に愛される城代・成田長親が、「武州・忍城を討ち、武功を立てよ」という豊臣秀吉による下知に従い、傲慢な態度で降伏を迫る石田三成率いる二万超の軍勢にわずか五百の手勢でも反旗を翻す、というもの。この成田長親はまあ、お察しの通り、……「のび太」である。勿論、ただの「のび太」ではなく、劇場版「のび太」だ。ただ、―――まったく新しい英傑、現る!とおNewであることを大層謳われているのは何故かと云えば、実際問題、小説で劇場版のび太を再現する困難さ故。劇場版「のび太」を演出するためにはまず「のび太」を演出しなければならないが、取り掛かってみて違和感を持つのは「のび太」らしい「のび太」にならないこと―――何より、それこそ《魅力的に描けない》ことだろう。そう、「のび太」はそのまま描くと全く魅力的ではないのだ。だからといって、小説特有の十八番的アレンジ―――心内文、地の文で(……馬鹿じゃないんですよ?)とカバーすればするほど、「のび太」っぽくならない。つーか、それはもはや「のび太」じゃない。面倒臭くなったので端折るが、―――本作は《視点》の工夫、及び歴史という裏付けを以って劇場版のび太を成立させた秀作。劇場版のび太(=《意志》を持つのび太)を作るには、のび太である《先入観》を仕掛けるのが云々。そもそもの話、「のび太」なのに人望があるってのが云々。……まあまあ、設定から主人公演出に色々「工夫」してあるよ。淡々とした書き口って評も目立つが、それは(劇場版)のび太を―――おNewな主人公を成立させるための弊害なので仕方がないだろう。ちなみに、このレヴューで着地したかったのは、テンプレ通りの登場人物しか作れないなら、それは逆に、読み手に《先入観》を与えられる特技なんじゃねえの?でした。「自信を持て!ぼくは世界一だと!」 by野比のび太。

第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

Medeski #- | URL | 2013/12/17 10:30 | edit
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