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第6回本屋大賞 5位:ボックス!/百田尚樹

ボックス!
(あらすじ)
高校教師の高津耀子は通勤中に電車内で暴れていた不良達を注意したせいでその不良達に絡まれてしまう。すると突然ある少年があっという間に不良達を滅多打ちにしてしまい耀子は助けられる。名前も名乗らず風のように去って行ったその少年を探す耀子はその少年が自分の勤めている高校のボクシング部の生徒「鏑矢義平」であることを知る。

answer.――― 77 点

百田尚樹の一時の伊坂幸太郎を思わせる本屋大賞の席巻、打ち立て続けるベストセラーには、ピカピカと光る自身を積極的に晒け出す、TVを始めとしたメディア出演に由来する部分も多々あるだろうが、個人的には題材を単純明快―――初心者にその道の視点を紹介しながら押し出していく作風が何よりもウケているのだと思う。物語を読みながら知識が増える一石二鳥の快感は、=面白い(=興味深い)!に繋がって有難がられるものだ。冒頭、不良に絡まれる女教師を救う「喧嘩上等」鏑矢義平、そんな彼とは対照的な「ごめんなさい」木樽優紀の2人を主人公に配した本作「ボックス!」は、《ボクシング》を題材にした青春譚。ボクシングはボクシングでも、本作で扱うのはプロボクシングではなく、アマチュアボクシングで、同じようで違う競技の説明を交えつつ、W主人公の王道、「天才肌」の経験者と「努力」重ねる初心者の立場の逆転劇を描く―――とまとめても良いのだが、流石は出版不況どこ吹く風の突き抜けたベストセラー作家だけあって、双方にしっかりと華を持たせる。率直に《相反する気質ながら、二人は親友!》をこうもストレートに描いてきたのには驚かされた。立場が逆転した後の2人の距離感は秀逸の一言に尽きる。百田尚樹は読み手の既視感をしっかりと把握しているのだろう。(王道故の)意外性を理解し、そこを踏んで読み手にオリジナリティの錯覚的演出を仕掛けてきている。同じ相手を前にしたW主人公のそれぞれの挫折の表現も味わい深い。そういう意味では、本稿冒頭で言及した外面的作風よりも、注目に値する著者の隠れた「作風」だと思う。勿論、ジャブから始まる講義、大阪という地域性を取り入れ、ボクシングの強豪校として名高い朝鮮学校の例を引いて、ボクシングに不可欠のハングリー精神に言及する等、対初心者アピールも抜かりない。拳闘場面を惜しみなく投入し、友情、努力、敗北、勝利が散りばめられた大衆小説としてまず良質な一作と云えるだろう。しかしながら、時が経って本作を振り返ったとき、―――何が残っているか。対初心者向けの作風に共通する「読書中」がピークという欠点もまた、本作は有していることを付け加えておく。「読書中」と「読後」、ピークをどちらに定めるかで同じイベントでも描写は劇的に変わるものだ。上下巻、合わせてのレヴューです。

第6回本屋大賞 5位:ボックス!/百田尚樹

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 百田尚樹

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