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第7回本屋大賞 10位:1Q84/村上春樹

1984.jpg
1.a novel BOOK 1<4月―6月>
2.a novel BOOK 2<7月―9月>
3.a novel BOOK 3<10月―12月>

answer.――― 78 点

ある程度のキャリアを積んだ作家は、これを挿しておけば良いだろう、という「逃げ」の手を持っている。村上春樹にとって、それは「ペニス」であり、「食事」だ。序盤に勢いをつけたいとき、あるいは、場面の停滞を感じ取ると、村上春樹はそれらに関する言及、事象を挿し込んでくる。ジョージ・オーウェルの代表作『1984年』とアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のフュージョンを試みた表題が何とも「らしい」、Now loading……なポップ・カルチャーの申し子・村上春樹の近過去小説である本作「1Q84」でも、己で使い古したそんな「逃げ」の手を早々に挿し込んでさっそく呆れさせてくれたが、―――ところがどっこい!単行本ならば全3巻、文庫本ならば全6巻という、まさしく!の大作な本作の第1部「a novel BOOK 1<4月―6月>」は、ファンタジー作家としての彼の素養はやはり世界レベルなのだと絶句する他ない《スケール》を披露してくれている。「1Q84」なんて登場人物自身が目の前の世界を命名するウルトラQな展開にとどめ刺す終盤も終盤、「リトルピープル」の出現には、……こ、こんなもの、絶対に処理出来るわけがないっ!そう誰もが確信しながらも、しかし次巻に手を伸ばさずにはいられなかったことだろう。―――大衆は、小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい。なぜなら、彼らは小さな嘘は自分でも吐くが、大きな嘘は怖くて吐けないからだ。なんてことをかのハーケンクロイツの総統様が仰られたようだが、まさに、である。もっとも、買ってまで読む価値があるのはこの第1部、あるいは「巻き込まれた」第2部までなのはご存知の通りだ。所詮、小さかろうが大きかろうが、嘘は嘘なのである。物語は美人暗殺者「青豆」、イケメン・ライター「天吾」の愛の交錯劇だったのに、《拡げた》世界を処理出来ないから第3部よりいきなりブサイクな脇役・牛河を主役に配して、本作の罪を背負う「生贄」にする展開は無責任と云わざるを得ない。文学の蓑を取り上げれば、村上春樹は話を終わらせられない事実しか残らない。きっと、かの『ノルウェイの森』の電話ボックスの場面よろしく、―――僕は今どこにいるのだ?でもそこがどこなのか僕にはわからなかった。見当もつかなかった。いったいここはどこなんだ?牛河、ちょっと死んでくれ。と殺しちゃったんだと思う。書き流してしまったが、暗殺、ゴーストライターからカルト宗教、児童虐待、二つの月、リトルピープル……と並べられるマクロにミクロにスパイシーな要素を兼ね備えた本作の第1部は、我こそは世界レベルの……!と嘯く諸氏の才能を量る絶好のテキストになることは必至。《スケール》を持つ作家は、それだけで「世界」に挑める。良くも悪くも、村上春樹の本領を発揮した欠陥的大作。全3部、合わせてのレヴューです。

第7回本屋大賞 10位:1Q84/村上春樹

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 村上春樹

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