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第25回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:忘れ村のイェンと深海の犬/冴崎伸

忘れ村のイェンと深海の犬
(あらすじ)
貧しいホロー村の少女イェンが拾った、深海の犬シェール。可愛さと凶暴さを併せもつ一匹の不思議な生物により、村は多大な苦難に襲われてしまう。故郷を救うべく、シェールと一緒に目指した都で偶然、国の王子と知り合いになったイェンたち。援軍とともに村に戻った彼女らを待ち受けていたのは、命を懸けた怪物との壮絶な戦いだった。

answer.――― 79 点

久方ぶりにシリーズ化したら追いたくなるファンタジーに出会った。本作の概要は、貧しいホロー村の少女イェンが拾った、深海の犬シェールがもたらす災厄、その顛末を描いたもの。【ガロキン図書館司書 手記より】とする冒頭からしばし、イェンが後に英雄になると前置いて、彼女の生まれ育った地―――作中世界の紹介を、歴史を紐解く形で進めていく。これがファンタジーならではと云うべきか、地名その他、造語が飛び交い、ややと言わず、忌避感に襲われるが、表紙に描かれているように苔、そして、キノコと菌類との共生で生計を立てているホロー村の仕組みなど、仄かなインテリジェンス薫るオリジナリティを挟んで緩和してくれる。しかし、やはり作品に強い求心力が備わるのは表題の一端を任されている深海の犬シェールが登場してからだろう。勝ち気なイェンがシェールを拾うことによって想像を超えた事態に陥り、鬱になるほど打ちのめされていく展開は、「人の性は悪なり」と訴えるスパイシーな迫害で、そこからイェンが村を飛び出し、一個軍隊を引き連れて戻ってくるダイナミック加減は、まさしく後の英雄の幼少期を飾るエピソードに相応しい。そうして、整った舞台、一個軍隊vs―――!というバッドエンドもかくやの凄惨な終盤は満足感が高い。そんな一連のホロー村での出来事の大団円を迎えるなか、多くの読み手が残りの頁数から(……はて?)と何かを予感するのは、それで、……イェンはどうやって英雄に?これこそ彼女のその後を追いたくなる理由だ。終盤も終盤、エピローグのように訪れる未知との遭遇。この場面を目にしてしまったら、もはや「……始まったよ!」と天を仰ぐしかない。Fantasy【fˈænṭəsi】―――それは読み手の想像超え、思考が停止するなか、登場人物だけが《意志》を持っている瞬間だと思う。ブッ飛ばされました。

第25回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:忘れ村のイェンと深海の犬/冴崎伸

category: さ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 70点 冴崎伸

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