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新潮文庫:旅のラゴス/筒井康隆

旅のラゴス
1.集団転移
2.解放された男
3.顔
4.壁抜け芸人
5.たまご道
6.銀鉱
7.着地点
8.王国への道
9.赤い蝶
10.顎
11.奴隷商人
12.氷の女王

answer.――― 82 点

本作は消失し、後退した文明を舞台に、旅をする主人公ラゴスの青年期から老年期を描いた連作短編。やはり注目すべきは青年期から老年期、作中で《時間を経過させている》ことだろう。作中で時間を経過させる―――それが文学に通じることを知ったのは、高校時分に読んだ中河与一の『天の夕顔』だったが(正確に言えば古典『若きウェルテルの悩み』が引き合いに出されて激賞されるも、当時の俺には理解出来なかったために他作品で披露されない事象を技巧と解釈した。文学=文章の機微程度の認識だった典型的TEI脳)、本作では旅を続けるラゴスが出会う不可思議な登場人物、遭遇する災難など紆余曲折の旅先での「滞在」により分かり易く《時間の経過》を意識出来る造りとなっている。もっとも、時間の経過は本作のあくまで一面で、その《時間》を引き金にした産業の発展、ラゴスの「知」を得る一連の過程(修得→反映→伝達)を人生の縮図と置き換えたり、とマクロにミクロに試みている辺りは流石の一言。また、人生の縮図、という意味での個人的なファインプレーは終章【氷の女王】で〆めたことに尽きる。どんなファンタジーも最後はいつまでも【To be continued】、「個」で終わるべきで、使命とも云える旅を終えたラゴスが前を向いた先で気づいた【氷の女王】は、まさにラゴスにとってのエバーグリーンな物語。「群」と「個」、ファンタジーに用意されるべきまったく性質の違う「使命」を丁寧に教えてくれる目から鱗の演出だ。ファンタジー書きは「……ナイス・エンディング!」と唸りましょう。

新潮文庫:旅のラゴス/筒井康隆 (1986)

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 筒井康隆

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